David Guetta『Nothing But the Beat』
今回のアルバムはDavid Guettaの『Nothing But the Beat』。
EDMを語る上では避けては通れない巨匠(らしい)David Guettaの、2011年のアルバムである。
一応いろんな音楽を聴くというのが目標なので、
今まで手を出してこなかったEDMにも手を出してみようと思い、
とりあえず名盤そうなこちらを聴くことにしたんだけど……
なるほど、ゲッタすごいな……
ポップソングに音とリズムをドカドカ追加して、盛り上がりをひたすら強調、ダンスミュージックに仕上げている感じ。
ドロップ(サビのことをこう呼ぶらしい)までは基本的に歌メロ重視のポップソングなのでめちゃくちゃ聞きやすくて入り込みやすいのに、ドロップで一気に音の渦中に放り出される。そりゃあもうテンション上がりますわな。
基本的に展開は全部同じなので、聴いたことない曲でもどこで飛べばいいかは一目瞭然。
誰でも入り込めるし誰でも乗れる、なるほどなあ。そりゃあ人気出ますわなあ。
ただ、アルバム通して聴くとめちゃくちゃ胸焼けする……
明らかにフェスとかクラブとかで聴いて無心で跳ぶための音楽で、
家でヘッドホン被ってモソモソ聴くタイプの音楽ではないよなあ。
ヘッドホンつけてジタバタと曲に乗ってるのもそれはそれで楽しいんですけどね。やっぱり消化不良感が残るよな。
お気に入り度★★★
「Turn Me On」「Play Hard」あたりが好き。
歌メロは全部ポップで良い。ボーカルもみんな上手い。
The Libertines『up the bracket』
今回のアルバムは、The Libertinesの『up the bracket』。
ガレージロック・リバイバル期の伝説的バンドの、1stアルバムだ。
ガレージロック・リバイバルのバンドって、初期衝動だの原点回帰だのなんだかんだ言ってはいるものの結局振り切れてないというか、スカしてる感じが拭いきれない気がする(偏見です)。
「俺達はガレージロックやっとるんやで」みたいな。「このシンプルな音がカッコええやろ」みたいな。
しかし、彼らThe Libertinesはそういったポーズとはまるっきり無縁。
まさにロックンロールの初期衝動、ギターを適当にアンプに繋いでそのまま掻き鳴らしたような音で、労働者階級の現実を歌い上げる。
しかも、そのメロディの甘いことといったら!
メロディもさることながら、この歌詞。歌詞がいい。
暴動の真っ只中にいながら、同時にその擾乱自体を俯瞰しているような、熱くて透き通った感じ。
それがこの甘いメロディとあいまって、めちゃくちゃにいい。
迸るような若さを感じる。いや、ぼくも多分当時の彼らとそんな変わらんのだけどね。
それなのに、曲はバリエーション豊かで、飽きることがない。
案外初期衝動だけではなく、冷徹で綿密な計画に基いてアルバムを組んでいるのかもしれない。プロデューサーはクラッシュのミック・ジョーンズらしいし ……
う~ん、どこまでもバランスが良いなあ。
お気に入り度★★★★★
「Time for Heros」「Up The Bracket」あたりが好き。
never young beach『YASHINOKI HOUSE』
今回のアルバムはnever young beachの『YASHINOKI HOUSE』。
新進気鋭のバンドが2015年に送り出した、1stアルバムだ。
初めて聴いた時は、それはもう衝撃だった。
まさか今、こんなにカッコいいバンドが登場するとは!
2015年版、日常系フォークロックの正統後継者という感じ。
3曲目(上の動画)なんかは特にサニーデイ・サービスっぽいし、7曲目なんかは特にはっぴいえんどっぽい。
サニーデイ・サービスは、はっぴいえんどのような世界観を持ちつつも、音や歌詞を90年代のものにブラッシュアップしていた。
never young beachもまた、日常の幸せを見つめて拾い上げるような歌詞とどこかノスタルジックなメロディを継承しながら、ところどころに今っぽいフレーズを入れてきていて面白い。
ギターの掛け合いやきらびやかな音の散らし方も心地よい。トリプルギターという珍しい編成が活きているなあ。
しかし、気持ち良くて楽しいだけかというと、そうでもないな。
結局生活はままならないことばかりなのだけど、その中でもふわふわとした希望を持ちつつ日々を行きていこうとする、2015年ならではの姿勢が垣間見える気がする。
そうして最後は、物思いに沈みながらいつのまにか眠りに落ちる。
モヤモヤとしながらも続いていく日常。
単なる焼き直しではない、彼らならではの世界観がここにはある。
お気に入り度★★★★
「あまり行かない喫茶店で」が好き。
D'Angelo『Brown Sugar』
今回のアルバムはD'Angeloの『Brown Sugar』。
伝説的ソウルミュージシャンD'Angeloの1stアルバムだ。
めちゃくちゃ気持ちいい。
絹のようになめらかで、感動はあるのにひっかかりの少ない音楽だ。
未だに、というか最近特に、多くの日本人アーティストに影響を与えているのも頷ける。前回のSuchmosもそのうちの一例だろう。
Suchmosのおかげで、こういう音楽をやるためには、バンド全員が研ぎ澄まされたリズム感覚とバランス感覚を持っていることが必要だ、ということがわかった。
「大枠は似てるけどちょっと違う音楽」を聴き比べることで、今まで気付かなかった要素に気付く体験は貴重で、良いものですね。
お気に入り度★★★★
「Brown Sugar」がやはり一番好き。
Suchmos『The Kids』
今回のアルバムはSuchmosの『The Kids』。
彼らの2ndアルバムにして、今年の1月末に発売された話題作である。
ぼくがこのアルバムを手に取ったキッカケは、やたらと流行っている「Stay Tune」を聴いたことだった。
いや~、完全にノックアウトされた。
この浮遊感よ。このオシャレ感よ。主張しすぎないのに癖になるリフ、ウネウネと動き回るベース、音も発音も軽いボーカル……いや、カッコいい。
PVの一部は明らかにVirtual Insanityのオマージュだし、音からもJamiroquaiへのリスペクトが感じられるのだけど、その音のドタバタ感(いい意味で)はまさに東京の夜。
キラーチューン中のキラーチューン。ここ最近聴いた邦楽では文句なしに一番の曲だと思う。
しかし、アルバムを聴いてみたところ、軽快な浮遊感がある曲は「Stay Tune」くらいで、あとはミドルテンポでユラユラと流すような曲が集まっていた。
ミドルテンポのソウルっぽい作風は嫌いじゃないんだけど……う~ん、ピンとこないなあ。どうにも重くて野暮ったい。
日本語という言語自体が重くて野暮ったい、というのはもちろんあると思うんだけど、
どちらかというと、この野暮ったさの原因は、ドラムじゃなかろうか。
ドタドタとどうにも平板すぎる気がする。
「STAY TUNE」ではドラムはほとんど出張っていなかったからなあ。
他の楽器隊にも、こういうソウル風の曲ならもうちょっとうねりがほしいところ。
やっぱり彼らの軽快な曲がもっと聴きたいな。
1stは軽快な曲が多いらしいので、そちらにも期待。
お気に入り度★★
「STAY TUNE」は文句なしの大名曲。
My Bloody Valentine『Isn't Anything』
今回のアルバムはMy Bloody Valentineの『Isn't Anything』。
歴史的名盤『Loveless』の前作となる、彼らの1stアルバムである。
全体的にスッキリしていて構成も素直。オルタナのインディーバンドといった色が前面に出ている1枚。ただ「素直」というのはあくまで『Loveless』と比べての話であって、あえてズラしてくるようなリズムが散りばめられていたり、ギターが突如うねりまくったりといった一筋縄ではいかない要素も多い。
『Loveless』の浮遊感あるシューゲイザーの萌芽が感じ取れる曲もある。特に「Suesfine」なんかは、浮遊感と爽やかさがいいバランスで調和していて気持ちがいい曲だった。こういうのももっと聴いてみたいな。
お気に入り度★★
なんだか煮え切らない感じだったな。
ここから方向性が定まった結果が、『Loveless』という1枚だったんだろうな。
Pixies『Doolittle』
今日のアルバムはPixiesの『Doolittle』。
『Surfer Rosa』に次ぐメジャー2ndアルバム。
Pixiesの最高傑作と評されることも多いらしいこのアルバム、
確かにすばらしい、快作、怪作だ。
どの曲もそれぞれに特徴的で似たような曲は一曲もなく、そしていわゆる「捨て曲」は一曲も無いのだが、
それでも1枚のアルバムとして聴き通せる一貫性がある。
それどころか、全曲が引き立てあっているように感じる。
なんだか奇妙な感触だけど、何回でも聴きたくなるな。
なんだこれ?なんだ……なんだこれ?でも良い……
Pixiesの良さである、「ノイズや絶叫の中に、突然ハッとさせられるような良いメロディが現れる」という特徴は今作でも見られる。
特に7曲目の「Monkey Gone To Heaven」の唐突な美しさは必聴。
単曲で聴くよりも、アルバムを通して聴いた時に光るような一曲だろう。
お気に入り度★★★★★
「Monkey Gone To Heaven」「Hey」が好き。