SOUND HOLIC『想 -OMOI-』
今回のアルバムはSOUND HOLICの『想 -OMOI-』。
初聴じゃないけども、帰省した際久々に聴いて「やっぱりいいなあ!」と感銘を受けたので。
中学生時代にめちゃくちゃ聴いたなあ。中学通して一番聴いたアルバムなんじゃないだろうか。
『想 -OMOI-』は、SOUND HOLICの東方アレンジシリーズである、漢字一文字シリーズの第7弾として発表された。
漢字シリーズでは、基本的にアルバム1枚通して一作の原作しか取り扱わない。
東方紅魔郷オンリーのアルバムは『紅 -KURENAI-』、東方妖々夢オンリーのアルバムは『妖 -AYAKASHI-』というように、原作から一文字取ってそれをタイトルにするのも共通点である。
しかし、今作『想 -OMOI-』は、少々趣が異なる。
東方萃夢想、東方緋想天、東方非想天則という3つの原作から、共通する「想」という文字を抜き出してタイトルにしているのだ。
原作がバラバラ、綯い交ぜになっているだけに、よりSOUND HOLICらしいマルチジャンルさが際立っているように思える。一曲ごとに区切りがある感じというか、コンピっぽいというか……他のアルバムのように、「原作の流れを追体験する」という要素が入っていないからだろうか。
さて、曲のほうだけども、
一曲一曲のレベルは漢字一文字シリーズで最も高い。これは間違いない。
特に、最初の4曲。
朝靄と曙光を思わせる一曲目のインストナンバーから、どちらも高水準にまとまっているユーロビート、デジロックと続いて期待が高まったところで、4曲目に来るのが序盤のハイライトである「Rainy, rainy days」。
現代歌謡曲風のアレンジが、まさにこの原曲にピッタリハマった名曲だ。
東方はそのメロディから、歌謡曲風のアレンジが合う曲が多いことは簡単に予想がつくんだけれども、
いざ歌謡曲風のアレンジを聴いてみると、これが案外大抵ピンとこない。
この原因は、東方界隈に歌謡曲を歌えるボーカルが居ないということである。
歌謡曲風のアレンジはボーカルの表現力ひとつで全く表情が変わってしまうものだけども、東方界隈にはそれだけ一曲に表情をつけられるボーカルがなかなかいないのだ。
そのことから、しばしば歯がゆい思いをしてきたものだった。
しかし、この「Rainy, rainy days」は、その積年の不満を一気に晴らしてくれたのだ。
アコースティック楽器を取り入れたポップで爽やかなアレンジも見事なら、このメロディと歌詞を表現しきる3L氏のボーカルも見事。
まさに、雨粒がだんだん輝いて見えてゆく様子が目に浮かぶような一曲。
3L氏がボーカルを取るSOUND HOLIC作品にハズレはないけれども、中でもこの曲は私のお気に入りの一つである。
全曲良いのだけど、あと特筆すべきは「全人類ノ非想天則」かな……
これはある意味素直なアレンジなのだけど、歌詞が良い。めちゃくちゃしっくりくる。非想天則アレンジはいくつもあるけど、この歌詞が一番好きだな。
お気に入り度★★★★★
総合レベルが高い。SOUND HOLICを聴いたことない人に1枚勧めるとしたらこれかな。でも、原作が格ゲーということもあり少々マイナーな原曲が揃っているので、その後の展開を考えるとどうだろうか……やっぱり『紅』とかのほうがいいかな……