Suchmos『The Kids』
今回のアルバムはSuchmosの『The Kids』。
彼らの2ndアルバムにして、今年の1月末に発売された話題作である。
ぼくがこのアルバムを手に取ったキッカケは、やたらと流行っている「Stay Tune」を聴いたことだった。
いや~、完全にノックアウトされた。
この浮遊感よ。このオシャレ感よ。主張しすぎないのに癖になるリフ、ウネウネと動き回るベース、音も発音も軽いボーカル……いや、カッコいい。
PVの一部は明らかにVirtual Insanityのオマージュだし、音からもJamiroquaiへのリスペクトが感じられるのだけど、その音のドタバタ感(いい意味で)はまさに東京の夜。
キラーチューン中のキラーチューン。ここ最近聴いた邦楽では文句なしに一番の曲だと思う。
しかし、アルバムを聴いてみたところ、軽快な浮遊感がある曲は「Stay Tune」くらいで、あとはミドルテンポでユラユラと流すような曲が集まっていた。
ミドルテンポのソウルっぽい作風は嫌いじゃないんだけど……う~ん、ピンとこないなあ。どうにも重くて野暮ったい。
日本語という言語自体が重くて野暮ったい、というのはもちろんあると思うんだけど、
どちらかというと、この野暮ったさの原因は、ドラムじゃなかろうか。
ドタドタとどうにも平板すぎる気がする。
「STAY TUNE」ではドラムはほとんど出張っていなかったからなあ。
他の楽器隊にも、こういうソウル風の曲ならもうちょっとうねりがほしいところ。
やっぱり彼らの軽快な曲がもっと聴きたいな。
1stは軽快な曲が多いらしいので、そちらにも期待。
お気に入り度★★
「STAY TUNE」は文句なしの大名曲。
My Bloody Valentine『Isn't Anything』
今回のアルバムはMy Bloody Valentineの『Isn't Anything』。
歴史的名盤『Loveless』の前作となる、彼らの1stアルバムである。
全体的にスッキリしていて構成も素直。オルタナのインディーバンドといった色が前面に出ている1枚。ただ「素直」というのはあくまで『Loveless』と比べての話であって、あえてズラしてくるようなリズムが散りばめられていたり、ギターが突如うねりまくったりといった一筋縄ではいかない要素も多い。
『Loveless』の浮遊感あるシューゲイザーの萌芽が感じ取れる曲もある。特に「Suesfine」なんかは、浮遊感と爽やかさがいいバランスで調和していて気持ちがいい曲だった。こういうのももっと聴いてみたいな。
お気に入り度★★
なんだか煮え切らない感じだったな。
ここから方向性が定まった結果が、『Loveless』という1枚だったんだろうな。
Pixies『Doolittle』
今日のアルバムはPixiesの『Doolittle』。
『Surfer Rosa』に次ぐメジャー2ndアルバム。
Pixiesの最高傑作と評されることも多いらしいこのアルバム、
確かにすばらしい、快作、怪作だ。
どの曲もそれぞれに特徴的で似たような曲は一曲もなく、そしていわゆる「捨て曲」は一曲も無いのだが、
それでも1枚のアルバムとして聴き通せる一貫性がある。
それどころか、全曲が引き立てあっているように感じる。
なんだか奇妙な感触だけど、何回でも聴きたくなるな。
なんだこれ?なんだ……なんだこれ?でも良い……
Pixiesの良さである、「ノイズや絶叫の中に、突然ハッとさせられるような良いメロディが現れる」という特徴は今作でも見られる。
特に7曲目の「Monkey Gone To Heaven」の唐突な美しさは必聴。
単曲で聴くよりも、アルバムを通して聴いた時に光るような一曲だろう。
お気に入り度★★★★★
「Monkey Gone To Heaven」「Hey」が好き。
Dr.Feelgood『Down by the Jetty』
今回のアルバムはDr.Feelgoodの『Down by the Jetty』。
孤高のパブロックバンド・Dr.Feelgoodの1stアルバムである。
その切れ味は、ライブアルバムと変わらず。愚直なまでにロック、ロック、ロック!
いつまでも頭を振り続けられる名盤。
モノラル録音の荒い音も、演奏の勢いを増しているようで全く苦にならない。
中でも、やっぱりウィルコ・ジョンソンのギターがめちゃくちゃ良い!
バッキングではザクザクとコードカッティングを刻みつつ、いざソロとなると一気に全面に踊り出して暴れまわる。
理性的ながらもキレッキレな感じが、猟犬を彷彿とさせる。
特に一曲目「She Does It Right」のプレイは圧巻。
お気に入り度★★★★★
「She Does It Right」「The More I Give」「All Through The City」が好き。
Dr.Feelgood『Stupidity』
今日のアルバムはDr.Feelgoodの『Stupidity』。
大傑作のライブアルバムである。邦題は『殺人病棟』。……殺人病棟とは?
いや、しかし、『殺人病棟』という邦題をつけたくなるのも頷ける内容だった。
ゴリゴリの横ノリに乗せて、リー・ブリローが叫ぶ!!ハーモニカを吹きまくる!!そしてその音の竜巻のなかを稲妻のごとく切り裂くのは、不世出のギタリスト、ウィルコ・ジョンソンのカッティング!!
いや、エゲツない切れ味。確かにこれは殺人病棟ですわ。
ボーカルのリー・ブリローも相当なもんだけど、
やはり圧倒的に目立つのは、ギターのウィルコ・ジョンソン。
カッと目を見開き、ひたすら前後運動を繰り返しつつ、素手でえげつないカッティングを繰り返す。
その姿から、「サイコ」というあだ名で呼ばれていたとか。そのギターの構え方がマシンガンに例えられることもある。
うん……どう見ても異常者だわな。
それがめちゃくちゃカッコいいんだけど。
お気に入り度★★★★★
いっぺんノッてしまえば最高のライブアルバムだ。
「She Does It Right」「Roxette」が好き。
THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『CASANOVA SNAKE』
今日のアルバムはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの『CASANOVA SNAKE』。
大名盤『GEAR BLUES』に次ぐ5thアルバムだ。
いや、今回もゴリゴリで最高だなあ!!!!
とはいえ、前作とは打って変わって親しみやすい雰囲気。
ずっと明るいかというとそうでもないんだけど、ひたすらバンド内のテンションに任せて突っ走ってる感じで、その親密さ、ドライブ感が良い。
前作が緊張だとしたら、今作は開放だろう。
全曲ゴリゴリのロックンロールだから体力は使うけど、カラッとしててめちゃくちゃにテンションが上がる。
特に「プラズマ・ダイブ」からの「リボルバー・ジャンキーズ」。
ここまでカラッとはっちゃけた曲はこれ以前にもこれ以降にも無いんじゃなかろうか。まだ何枚か聴いてないやつあるけど。
そんなカラッとしたアルバムを〆るのが、「ドロップ」なんだけれど、この曲は他の曲とまったく趣が違う。
楽器隊はひたすら同じような進行を繰り返し、その上でボーカルが切れ切れに叫ぶ。
そのジワジワと何かが進んでいく感じが、まさに「じりじりと夜になる」ようで、胸に迫るものがある。どんどん気持ちが落ち着いてきて、「ああ、もう終わるんだな……」という気分になる。
狂乱のアルバムを締めくくるのにふさわしい名曲だ。
お気に入り度★★★★
「プラズマ・ダイブ」「リボルバー・ジャンキーズ」「ドロップ」が好き。
Hatfield and the North『The Rotters’ Club』
今回のアルバムはHatfield and the Northの『The Rotters’ Club』。
Hatfield and the Northはスタジオアルバムを二枚だけ残して解散してしまったが、これはその二枚目である。
牧歌的ながらも、激しいインタープレイによる盛り上がりもあり、それがまた美しい。
激しいながらも重く鋭いわけではなく、あくまでも角が丸い感じ。
幻影的なメロディがジワジワと絡まり合い、徐々にテンションが上がっていくような……
そこに乗っかるのがリチャード・シンクレアのボーカル。
これはもう文句なしに良い。これだけ柔らかで暖かいボーカルはそうそういないだろう。この牧歌的で幻想的な雰囲気に、彼のボーカルが寄与するところは大きい。
初聴で格別に衝撃を受けるようなアルバムではないのだろうが、
その凄さはわかる。
また何回か聞けば、あるいは何年か後に聞けば、
ハマるタイプのアルバムなのだろうな。
お気に入り度★★★