Super Furry Animals『Hey Venus!』
良いメロディを書くバンドを一つ挙げよ、と言われたら、どんなバンドを思い浮かべるだろうか。
Beatles、oasis、その他様々なバンドが挙がるだろうが、やっぱり思わずしみじみとしてしまうような良いメロディを書くバンドは英国に偏りがちな気がする。私がこんかい推したいのは、そんな英国の外れも外れ、ウェールズから現れたサイケポップバンド、Super Fully Animalsだ。
Super Fully Animals。すごい毛むくじゃらの動物(直訳)。ケセランパサランみたいな物体が寄り集まって鳴いている姿なんかをつい想像してしまうような突飛な名前だが、彼らの書くメロディは一級品だ。
そんなSFAのアルバムの中でも、特にメロディの美しさが際立っているのがこの
『Hey Venus!』である。
稀代のメロディメーカー
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まずは、tr.3の「Show your hand」のライブ映像を見てみよう。
理解が追いつかん。
満員の野外会場が映しだされた数秒後に、舞台に現れるのはティラノレンジャー。
ヒーローショーかと思いきや、マイクを目に当てている。どうやら歌っているらしい。目から。しかも少し鼻にかかった独特の声をしている。
そして曲がサビに入り、流れだす歌はとびっきりメロウで美しいメロディ。もはや何が起きているのか全くわからん。
一面は色物サイケロックバンド、もう一面は爽やかポップバンド。
そんな狂気と癒やしが同居したサイケポップバンドが、Super Furry Animalsだ。
無論、サイケなのは振る舞いだけではない。
曲もポップの範疇から逸脱しないギリギリのラインまでひねくれたものになっている。
今作の歌詞には、かなりの頻度でドラッグが絡んでくる。例えば、1曲目の「Gateway song」の「Gateway」とは常習癖に陥りやすく、より強力なドラッグの使用に至りやすいドラッグのことらしい。また、7曲目の「Baby ate my eightball」の「eightball」とはコカインの俗語だ。
暫く前の作品では過剰なまでにサンプリング音声を使用したり、打ち込みで派手に装飾したりと好き放題やっていたのだが、このアルバムにはそうした激しい曲はなく、存分にメロディの美しさが堪能できる。
オススメ曲は、tr.4の「Show your hand」と、tr.9の「Suckers!」。
tr.4はポップのお手本のような美メロの名曲。
tr.9は「Suckers(クソ野郎)」と連呼する強烈な歌詞を、しっとりとした心地よいテンポに乗せて歌い上げる不思議な曲。
私が特に好きなのはこの二曲だが、このアルバムの曲は全部良い。
ぜひ手にとって聴いてみてほしい。