Miles Davis『Round About Midnight』
今回のアルバムはMiles Davisの『Round About Midnight』。
そろそろMiles Davisを聴こうかなあと思い、適当に目についたやつを借りてきたんだけど、どうやら代表作の一つらしい。
やったね。
ジャケットの不穏な印象とは裏腹に、
ウォームでリリシズムに満ちたアルバムだった。
特にトランペットとピアノのソロ。トランペットがリリカルで親しみやすいソロを吹き、サックスがちょっと変則的なリズムや音に冒険し、ピアノがまたリリカルなソロを弾いて落ち着いたところで締める……というパキパキした演奏がかなり好み。
ぼくみたいなジャズ素人にも聴きどころがわかりやすいアルバムで良いなあ。
お気に入り度★★★★
「’Round Midnight」「Bye Bye Blackbird」が好き。
Jamiroquai『A funk odyssey』
今回のアルバムはJamiroquaiの『A funk odyssey』。
Jamiroquaiも星野源と同じく(ホンマか?)ブラックミュージックをポップに昇華しているアーティストの一人だけども、
このアルバムは比較的ハードで、ディスコチックな曲が多い気がする。
低音が効いている上にシンセを多用しているからだろうか。
前の記事でも「バランス」に言及したけど、
Jamiroquaiはほんとにバランスのとり方一つで完全に独自の音楽を作り上げているように思う。
JamiroquaiはJamiroquaiだもんなあ。同じような曲を作り続けているということもあるだろうけど。
気負わずスッと聴けて、それでいて緩急もあり飽きない、いいアルバムだ。
お気に入り度★★★★
「Feel so good」「Love foolosophy」が好き。
星野源『YELLOW DANCER』
今回のアルバムは星野源の『YELLOW DANCER』。
星野源に対してはなんとなく食わず嫌いをしていたけれど、
いざ聴いてみると……案外良い。
ソウル、ファンク、テクノなど、ブラックミュージックの影響は多分に感じられるんだけど、
「日本語でブラックミュージックをやる」という感じではなくて
「歌謡曲・ポップソングにブラックミュージックのエッセンスを足す」くらいにまとめてるところが良い。
ブラックミュージックをしっかり消化した上で、日本らしい音楽に昇華しているのである。
星野源の声質ではなかなかブラックミュージックのソウルフルさは出せないだろうし、このポップネスは声に合った着地点ともなっている。
この「あくまでJ-POP」というバランス感覚と、親しみやすい音高・声質はやっぱり今の大ヒットの要因になっているんだろうなあ。
それに星野源、曲のセンスもさることながら、演奏陣がすごい。
OKAMOTO'Sのハマ・オカモト、凛として時雨のピエール中野、元はっぴいえんど・YMOの細野晴臣といった錚々たるメンツのほか、
ブラスや弦、ピアノも豪華メンバーが揃っている。
それでも演奏が目立ちすぎることはなく、あくまで歌モノの名脇役に留まっているんだけれどね。やはりバランスが良い。
お気に入り度★★★★
「SUN」「桜の森」「Down Town」あたりが好き。
OGRE YOU ASSHOLE『ハンドルを離す前に』
今回のアルバムはOGRE YOU ASSHOLEの新作『ハンドルを離す前に』。
初聴の感想は「感情がないなあ」というものだった。
歌謡曲的なメロディの良さは失われていないのだけれど、
何らかの感情を起こさせるようなメロディはほとんどない。
良いメロディだけど、それを聴いて悲しくなるとか、嬉しくなるとかそんなことは全く無く……
かといって突き放すような冷たさがあるかというとそうでもなく、聴きやすいし親しみやすいのに何の感情も発生しないという不思議な音楽になっている。
音数は今回も少なく、さらに前作までは残っていたドリーミーさも抑えられている。
これも「感情のなさ」に寄与しているんだろうな。
ボーカルの出戸がもともと持っていた一歩引いた感じというか、当事者意識が無い感じも際立っている。
お気に入り度★★★★
「ハンドルを離す前に」「もしあったなら」が好み。
あ、昨日このアルバムのリリースツアーのライブに行ってきたんですけど、
めちゃめちゃ良かったです。めちゃめちゃ良かった。
ライブで聴く『ハンドルを離す前に』の楽曲は全然表情が違う。
もともとライブとアルバムで違うことやるバンドだということはわかっていたけれど、まさかここまで化けるとは!
CDでしか聴いたことがない人がライブの映像を見たら、きっとOGRE YOU ASSHOLEに対する認識が大きく変わるはず。
特に「ロープ(Long ver.)」のテンションは最高なので、ぜひ見てみてくださいな。
Arctic Monkeys『AM』
今回のアルバムはArctic Monkeysの『AM』。
2013年に出た5枚目のアルバムである。
これはすごい。こういう方向に行くのか。
1st、2ndと聴いてきて、「迸る若さと独特のうねりを持ったガレージバンド」という印象を持っていたけど、
今回はそのうねりがヒップホップやR&Bといったブラックミュージックと組み合わされて昇華した感じ。
その分、若さは鳴りを潜め、じっくりと聴かせる音楽になっている。
キラーチューンはないけど、どの曲も満足できる出来だ。
歌詞カードの「ARCTIC MONKEYS」というロゴがサバスっぽくなっているけど、
これは初期サバスへのリスペクトなのだろうか。
けっこう内容も初期サバスに寄せてきてる気がするけども。
これは何回も聴いているうちに良くなってくるやつだろうなあ。
これから聴き込んでいかないと。
お気に入り度★★★
OGRE YOU ASSHOLE『ペーパークラフト』
今回のアルバムはOGRE YOU ASSHOLEの『ペーパークラフト』。
前作の『100年後』に見られたようなドリーミーさ、浮遊感は残っているものの、より音数が抑えられ、研ぎ澄まされたような印象。
まさに「ムダがないって素晴らしい」という感じ。
一点への集中力を感じる。
薄いのに案外しっかりできている、ペーパークラフトとはこのアルバムの歌詞ではなく音をこそ象徴する言葉なのかもしれん。
今回は歌詞も前作よりメッセージ性の強いものになった気がする。
案外うまく成り立っているし、見た目も良いのだけれど、何かが欠落しているような社会への批判を感じる。
いや、社会への批判だけではないんだろうな。オウガ自身も自分たちの中に欠落を感じているのかもしれない。ただ、それに対する問題意識が、結局「これも良し」という妥協に決着してしまい、終曲の最後にはまた『Homely』の「居心地が良くて悲惨な場所」に戻っていってしまう……
そんな葛藤を感じるのだけれど、深読みしすぎやろか。
お気に入り度★★★★
エレファントカシマシ『生活』
今回のアルバムはエレファントカシマシの『生活』。
すばらしいアルバムだった。
いや、すばらしい。ここまでグッとくるアルバムは久しぶりだ。
アルバムの内容としては、終始ボーカルの宮本が叫び、下手なギターをかき鳴らす曲が続くだけなのだけれど、
その熱量と、詩が絶妙にマッチしている。
そう、詩。このアルバム、詩がすごくいいんですよ。
自分と世間との摩擦に苦しみながら、
ささやかな生活の中にあるささやかな美を見据えて、主体的に生活を送っていこうとする決意……
梶井基次郎なんかを彷彿とさせるような、清冽で冴えた文章、それでいて宮本特有の爆発的な感情の発露もある。
聴いてるとあまりの悲壮さ、それゆえの美しさに涙が出そうになるんだけども、同時に「俺もやっていくぞ」という気持ちに……
いや、ならない気がするな。一曲目時点ではなっていたけど、どんどん聴いていくうちに、
「宮本は必死に戦っているけども、ぼくは何もしていないじゃないか、
この程度の自分が勝手にこの曲に共感していいのか?いや……」
なんて、自省する羽目になってしまった。
下のリンクにも書いてあるけども、自分の安全領域に土足で踏み込んできて、胸ぐらをつかんでくるような、そんなアルバムだと思う。
詳細な解説はいいブログがあったので任せます。
お気に入り度★★★★★
「男は行く」「偶成」が好き。
「偶成」の最終連の美しさたるや!