衝動的の人『BEST POSITION』
前回の『極東アウトブレイク』に引き続き、今回も東方バンドアレンジ。
衝動的の人の1stアルバム『BEST POSITION』を紹介する。
2011年、東方バンドアレンジ界隈はますます進化を続けていた。
石鹸屋一強時代も今は昔。
次世代を担う強力な新サークルが続々と登場。豚乙女やGET IN THE RING、それからUnlucky Morpheusなんかもこの頃に現れた。
TaNaBaTaや石鹸屋は精力的に新作を発表。岸田教団はなんとアニメの主題歌までやっていた。
まさに東方バンドアレンジが一番盛り上がっていたこの時期に、満を持して発表されたのがこの『BEST POSITION』。
まさに、東方ロキノンアレンジの決定版ともいえる大傑作であった。
衝動的の人が活動を開始したのは2009年。
ニコニコ動画への動画投稿、コンピCDへの参加、サークル「空色作戦」での活動などで、多くの曲を発表していた。
そして2011年になって、その多くの曲の中から、衝動的の人本人の「周辺で割りと評判がいいやつ」を集めたのがこのCDだ。
なんと、1stアルバムからベスト盤なのである。
ベスト盤なだけあって、聴き応えは十分。一曲も気を抜けない粒揃いの全8曲だ。
衝動的の人の楽曲を初めて聴いた際、最も衝撃的だったのはその歌詞だった。
当時私は、東方アレンジの歌詞といえば、キャラについての物語だとか、原作ストーリーに即した情景だとかを扱うのが一般的だと思っていた。
しかし、衝動的の人は、そこで明確に「君と僕」の物語を歌詞に据えてきたのだ。
その歌詞の持つ鮮烈なイメージと、どこか諦観したような、くたびれたような衝動的の人の歌声は非常にマッチしていた。
そしてそれは、このアルバムにおいても一貫している。
特にtr.6の「-k」は、灰色や青といった寒々しい色で描かれていた景色が、最後に一気に虹色に開けるという情景描写が美しい名曲。「おてんば恋娘」のロックアレンジは案外数がないが、これはその中でもトップクラスに好きな曲。
衝動的の人は、最近は「ヒトリエ」というロックバンドでギターを弾いている。
私はヒトリエの曲はイマイチ好きになれないので、衝動的の人には少しでもソロ曲を書いて欲しいと思っているんだけど……ヒトリエはメジャーで大当たりしてしまったのでどうやらそれも難しそうだ。悲しいなあ。いや衝動的の人がついに評価されるのは本当に嬉しいんだけど……ヒトリエかあ……
とりあえずもう一作だけでも東方アレンジベストを出してもらえたら本当に嬉しい。私が一番好きな楽曲の「サヨナラアンブレラ」もまだ宙ぶらりんだし……
シノダさん!シノダさん見てるか!ソロアルバム待ってます!!待ってま~~~す!!!
それでは~ ノシ